スキップしてメイン コンテンツに移動

【review】風立ちぬ

※この投稿はネタバレを含みます。ご了承ください。






風立ちぬ


感想:残酷な、愛と平和の物語。これが最後の長編作品だなんて、随分皮肉な……

我が家の近くには掩体壕がある。
ご存知でしょうか? 太平洋戦争中に空襲から戦闘機を隠す為に作られたカマクラのような形をしたものです。

飛行機が入っていたと聞いても、「本当に?」と聞き返してしまうようなくらいの大きさで、当時の戦闘機の小ささを感じます。

さて、『風立ちぬ』ですが。
2013年かぁ。あれを読んだら、あれを見たら、と思っていたら随分時間が経ちました。

時間が出来て、観なおすことが出来たので、とりあえず書きます。不勉強なところは許してください。

関東大震災

このシーンは、東日本大震災なくして出来なかったのでは?
とても現実的で不思議なシーンでした。
夢の中のシーンは飛行機の音などが声で表現されていたんだけれど、関東大震災のシーンは現実なのに声で音が表現されていましたね。
現実だと思えなかったから?

印象的だったのは、神社に避難した人が余震にあうシーン。
東日本大震災を体験して自分でも不思議だったけど、何故か空を見るよね。
揺れてるのは地面なのに何で空見てるんだろう……と解っていても目が離せなかったのを思い出しました。

鯖の骨

青年期は、飛行機の開発の話。

堀越二郎は今までのジブリのヒーローのようではない。
多くを語らず、大袈裟に一喜一憂もしない。ただ、その目線だけが何かを孕んでいると思わせるだけである。
「何が」と問われると難しいけれど、段々魅力的な人物に見えてくるから不思議。

戦争が近づいて飛行機の開発の需要も増えてくる。

本庄がドイツで「貧乏な国が飛行機を作る……」と言ったのが印象的でした。
かの北の国のことを「カップラーメンも作れない国」と言った方がいるそうですが、カップラーメンが作れない程貧しいのではなく、カップラーメンを作れない程全てのお金を軍事開発に使っていたのだとか。

日本にも、それに近い時代があったのですね。

そして、このドイツのシーンの飛行機は随分とゴツいというか、今までのジブリ作品では見ない描かれ方をしていましたね。
写実的?本当に、兵器として使う為の素っ気ない色、というか。

今回、それ以外のシーンが随分とカラフルな印象がありました。
着物一つとか、鞄とか、電車の内装とか。
堀越二郎のスーツの色ですら「マジ?」ってくらいカラフルだったので、このシーンが余計無機質に感じるんですよね。

話が少し前後するのですが、堀越が大学卒業後、「名古屋へ行く」と言っていて、ん?名古屋って川崎重工じゃないの?と思ったけど、三菱もあったんだね…… 当たり前か。勝手だけど、長崎へ行くのだと思ってた。

更に「はやぶさ班!」と言われていて、陸軍機?中島飛行機の?!と思ったら、後に中島飛行機に競り負けていて、そういうことかぁ……と納得。

風は吹いているか?

作品中、何度も堀越二郎はそう問いかけられる。

風は吹いているか? なら、生きなければ。

作品冒頭、カプローニは飛行機を「戦争の道具でも、商売の手立てでもない」と言う。
しかし、現実は違う。戦争が近づき、時代はやがて巨大戦艦から空母の時代へ。
それに伴って戦闘機、飛行機の需要が増えて開発が進む。

美しい飛行機が作りたい。

その純粋な望みは、皮肉にも人殺しの道具になることで達成されていく。
作品は堀越二郎が九試単座戦闘機を開発したところまでで、戦争は深くは語られていない。

だけど、今までであんな色の空を見たことがあっただろうか。
あんな絶望的な色の空を。

ナウシカも、ラピュタも、紅の豚も、主人公が駆けるのは抜けるような美しい青空だったのに。

「(僕の飛行機は)一機も戻ってきませんでした」というのは本当で、現存する零戦なんかは外国に残ったものを持って帰ってきたものだと思います。

技術が盗まれないように故意に破壊したものもあったはずですが。


何でしょうね。
作品の中で、面と向かって戦争の事とか、語られてはないのですが。
ただ、飛行機が好きで、飛行機を追いかけて。
でもそれが正義に成り得ない時があるというか。
しかし正義ではなかったからこそ辿りつけたというか。


うーん、泣きながら宮崎駿作品観たのは初めてかも。ジブリ作品、ということなら『平成狸合戦ぽんぽこ』があるのですが。あれは、高畑勲監督だからねえ……

深く考えてはいけないんでしょうけれど。
面白い、というよりは好きな作品でした。
好きです。

コメント

このブログの人気の投稿

【 】高畑勲監督のお話 #ジブリ #高畑勲

【  】 高畑勲監督のお話 . iRoakg 高畑勲氏が死去…昨年夏頃に体調崩し入退院を繰り返す 言葉になりません。 いつかは来る日だと知っていても、寂しいです。 1番好きな話はやっぱり『平成狸合戦ぽんぽこ』だな。 どこか懐かしい、そして噺家さんとかをたくさんキャスティングして耳障りの良い語り口調で。 後にサンを演じる石田ゆり子さんはこの作品がジブリ初主演でしたね。 清川虹子さんに車椅子でもいいから、と出演を依頼したおろく婆は、納得のキャラクターでした。 東大卒の方だとは、本当に最近知りました。 それよりも面白いエピソードが多すぎて。 そうそう、『柳川堀割物語』がなければ『天空の城ラピュタ』はありませんでしたよね。 高橋監督の制作費が膨らんで、お金がなくなったから作ったんですよね(笑)。 ジブリのスタジオを探すときもジャンパーで来たことに鈴木さんから「いい歳してそれはない」と言われて、翌日ジャケットを来てきたら決まったらという話がありましたね。 お話を聞いていると鈴木さんもジャンパーなような気がするのに。理不尽。 そういえば、「おれ(の作品)は(宮崎監督作品の)繋ぎか?」と言っていたこともあったそうですね。 高畑勲監督作品が繋ぎ、って。 山田くんも、かぐや姫も、おもひでぽろぽろも、火垂るの墓も、ホルスも、ハイジも、面白かったけど、やっぱりぼんぽこが好きだったな。 人間のやつは狸だったんだ! 狸の風上にも置けないやつめ! 山を返せ!里を返せ!野を返せ! という台詞が印象的でした。 里山を保存する活動にも参加されていたようですね。 言葉では言い尽くせません。 このまましばらくは亡くなった事を忘れるかもしれません。 寂しいなあ。

【diary】クラウドファンディングをやってみる #クラウドファンディング #CAMPFIRE #PWJ

diary クラウドファンディングをやってみる . iRoakg Amazon この世界の片隅に きっかけは、この映画。 個人出資で映画とか出来るんだ!と知りまして。 しかも好きな漫画だったし、作品も素晴らしかった。 同じ年に『君の名は。』の大ヒットもありましたが、こちらの作品も高く評価されていましたね。 映画『この世界の片隅に』★★★★4.0点。 どこにでもいる女の子が、両親、兄弟と暮らしていて。 少し気になる男の子がいたり。 お嫁にいったり。 … https://t.co/ez3BkLD8nV #Filmarks #映画 — かおり (@iRoakg) 2017年9月16日 そしてきっかけになったのが こんな活動もあるんですね。 確かに、少ない子供に勉強する機会はなるべく平等にあって欲しい。 #チャンスフォーチルドレン pic.twitter.com/nolCmfADri — かおり (@iRoakg) 2018年2月3日 クラウドファンディングでこういう事をしているんだ、と俄然興味が出てきました。 元々、募金だとかボランティアだとかそういうのには関心がないタイプ。 だけど「○○をするから、支援して!」と言われればYESかNOか考えられる。 そして、面白そう。 どうやらCAMPFIREという所が結構大手らしい。 CAMPFIRE 他にもあるかもしれません。 ただ、ここも結構沢山のプロジェクトがあって、読むだけでも面白かったです。 個人の小規模なものから大規模なものまで。 毎回プロジェクトをチェックするのは面倒なので、LINEでお友達になりました。 初めてクラウドファンディングに参加 参加でいいのか? でも募金でもないような…… LINEにこんな通知が。 ピースウィンズ・ジャパン!知ってる! 熱風で連載読んだ! ということで、1番少額な1500円だけですが、お金を振込むことに。 入金はクレジットとかペイジー等がありました。 私はペイジーで入金。 今回は災害支援金でしたが、ビジネス的な内容のものも結構あります。 額にもよりますが、楽しそうなものはまた

【review】10DANCE【BL】

読んだBL小説の登場人物が、会社の同僚と同姓同名で一気に萎えました。 いや、カッコイイ人なんだけれども。 小説の方もそれなりに面白かったんだけども。 そうじゃない。 そうじゃないんだよ。 あー胸糞悪い。 と、いう訳で「10DANCE」こちらは漫画です。 競技ダンスの漫画です。 私、よく知らなかったのですが、競技ダンスにはスタンダードとラテンという2ジャンルがあるんですね。 スタンダードはワルツとかの所謂「 Shall We Dance 」の世界。 ラテンは(年がバレるけど)ウリナリ社交ダンス部で杉本南原ペアやビビアン内村ペアが踊っていたのがそうっぽい。 で、それぞれに5種目のダンスがあって スタンダード(モダン) が ワルツ 、 タンゴ 、 スローフォックストロット 、 クイックステップ 、 ヴェニーズワルツ。 ラテンアメリカン  が チャチャチャ 、 サンバ 、 ルンバ 、 パソ・ドブレ 、 ジャイブ。 んでもって、タイトルの10DANCEはこの全然違う2種類の計10種目のダンスを踊って競う、というなんともとんでもない競技ダンスのお話。 で、で、で、主人公二人がそれぞれラテンとスタンダードの国内チャンピオンで10ダンスに出るのに互いのジャンルのダンスを教え合う……という話なんですが。 ここまでの説明長いね…… 漫画だと上手にまとまっているんだけどね。 とりあえず、ダンス漫画として面白い。 競技ダンスの漫画って『ダンシング』(佐々木潤子)くらいしか読んだことがないから比較対象がないけど。。。 チェリープロジェクト(武内直子)とかはフィギュアスケートだったよね。 そうだったよね。 で、主人公二人は名前も一文字違い、体格もほぼ同じ、、、というシンクロシニティで、惹かれ合うような、反発するような形でお互いのダンスにのめり込んでいく……という、お話。 とりあえず、ずっとダンスの話、大会の話 、ダンス業界の話、とダンス漬けで面白い。 華やかに踊って素敵!という感じでもなく、スポーツ漫画のような雰囲気すらあります。 さて。ところでこの漫画。