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【review】ディズニーランドの経済学



review

ディズニーランドの経済学








場所は日光東照宮。
学生の私は周りを取り囲む木々を見つめて「ディズニーランドだ……」と思った。
ディズニーランドは遊園地じゃない。
構造は宗教施設のそれと一緒だ、と。


ディズニー関連の名著というのは沢山ある。
私が、と前置きしなくても問答無用の名著は下記の二作だろう。(リンク先は楽天ブックスです。電子書籍化はされていないようです。)


ディズニーランドという聖地 [ 能登路雅子 ]
ディズニーランドという聖地 [ 能登路雅子 ]
価格:864円(税込、送料込)

『ウォルト・ディズニー』/ボブ・トマスは言うまでもなくウォルト・ディズニーの伝記。
地味なところでウォルト、ロイは二人兄弟ではなく上にまだ男兄弟がいた、というだけでも驚き。

『ディズニーランドという聖地』/能登路雅子は東京ディズニーランドが出来るまでが書かれたノンフィクション。

ディズニーファンなら読んで損をすることはない本だと思います。

で、今回の『ディズニーランドの経済学』。これも名著と言われていましたが、長く絶版だったと記憶してます。
現在は電子版も出ているので、紙の書籍もあると思うのですが。

まあ、ファンとして捨てどころのない本なので面白かったエピソードだけをご紹介します。


ディズニーランドという“場所”

私が日光東照宮でディズニーランドを思い出したのは、閉鎖された空間で世界観を作り上げる“異世界へ引き込む”装置のせいだったのですが。

それもその筈。
(東京ディズニーシーが出来る前の数字だと思うのですが)
ディズニーランドのパーク部分は全敷地の56%だそうで。もちろんバックステージもあるのでしょうが、ゲストが現実世界から異世界に入るまでの“クッション”が充分に用意されているということだそうです。

敷地もさることながら、投資額もすごい。
オープンに1500億円。シーが出来るまでの18年間に1800億円。
書いていても桁を間違えているかも……と思うような投資額。

そしてその後、シーのオープン。

そうそう、その東京ディズニーシーですが。
当初、ランドの横にはMGMスタジオを建設する予定だったそう!
仮契約まで終わっていたのに「映画のテーマパークは日本人には馴染まない」と白紙にして、オリエンタルランドは1000万ドルの違約金を払ったとか。
USJの開園当初の苦戦を見ると、この判断は正しかったと思えますね。

その後、オリエンタルランドの発案で東京ディズニーシーが建設されます。
シンボルであるアクアスフィアもオリエンタルランドのアイデア。ディズニー側は灯台を提案していたそうです。
灯台にしていたら灯台下暗し……なんて写真が撮れたかも。

ちなみに本書では(能登路雅子さんのコメントの引用だったかな?)シーはディズニーのテーマパークではなく「ディズニー式」の「日本仕様」のテーマパークだと言っています。
言われてみれば、だけど、シーではランドのような縮尺のルールが適用されていないそうです。


ウォルト・ディズニーは「人はいい映画や芝居を観るとまっすぐに帰宅しない」ことに気がつき、積極的に勧めるのではなく、質の高いエンタメで飲食やグッズの収益を上げるようにしたそうです。

それが遊・食・ショッピングが一体の日本人の“お土産文化”がマッチして、収益のほとんどを入園料に依存している他国に比べ、日本は入園料42%、商品36%、飲食22%。
シーのオープンの際には、ランドの時以上にグッズや飲食に力を入れたそうです。



米国の忠実なコピー

そんな日本のディズニーランドですが、当初は「日本人は恥ずかしがりやだから上手くいかない」と言われたそうです。

実際は、大当たり。
ミッキーの帽子などは本国アメリカよりも日本の方が売れたそうです。
そして子供だけではなく大人もかぶった(笑)。

東京ディズニーシーはディズニー式・日本仕様のテーマパークですが、東京ディズニーランドは“忠実なコピー”だそうです。

それがどういうことかと言うと、(オープン当初?)日本のオリジナルはミートザ・ワールドとエターナルシーに2つ。
強いて言えばミッキーマウスレビューも本国にはないそうですが、それは米国にあったものを日本に移転したから。
ミッキーマウスレビュー、そんなに歴史のあったものだったとは。
もう一度見たいけど、もうないんだよな……

その他にもカントリーベアシアター(ジャンボリー)は15場面中吹き替えたのは5場面のみ。あとは表情や仕草でカバーしたそう。
これは通常バージョンのことでしょうね。

ミートザ・ワールドに当たるアトラクションは米国では「プレジデントホール」になります。


私もYouTubeでしか見たことはないですが。米国の方だったら愛国心を揺さぶられる内容かもしれませんね。
ディズニーは「古き良きアメリカ」にこのプレジデントホールと潜水艦を加えて「強いアメリカ」を印象づけているそうですが、日本ではこの「強いアメリカ」をコピーせず「平和国家」に翻訳しなおしているとか。

本書ではミートザ・ワールドを提供の松下電器(パナソニック)の松下幸之助とディズニーの「平和と努力の商売繁盛の松下イズムとディズニーの啓蒙主義の奇妙な融合」と言っています。

何となく納得。これももう一度見たいなあ。



アメリカ式サービス業の成功

かつて、サービス業を学ぶならディズニーかマクドナルドと言われていましたが。
現在でこそ色々ありますが、東日本大震災でのキャストの対応などを考えれば、まだまだ廃れたものではないと思います。

アメリカ式サービス業の特色は「従業員の質を選ばない事」。
言われてみれば、日本は「丁稚奉公式」か……
労働・人種・言語・人格を問わず同じサービスが出来る。
これは日本にもマッチした。
かのセブンイレブンも米国サウスランド社から技術導入してるらしい。へええー。

ディズニーの信念はこのアメリカ式サービスであるマニュアル厳守。「完璧主義を守らなければ普通の遊園地になり下る」としている。
日本は更にアレンジを加えて日本仕様にしているそうです。

アメリカ式で大成功しているディズニーですが、「ディズニーはアメリカで流行ったものはそのまま日本でも通用すると思い込んでいる」というオリエンタルランドの言葉もあります。
日本の東京ディズニーリゾートは初めて米国以外に出来たディズニーのテーマパークであり世界で唯一のフランチャイズのディズニーです。
というより、日本が大成功したので逃した魚を悔やんだディズニーは自社で海外のパークを作っているんですよね……
日本のロイヤリティフィーは確か入園料とグッズだったような気がするし……飲食取ってなかったんじゃないかな? 22%って収益から考えれば結構な金額になりそうなのに。

ただその成功という結果があるからこそ、言われるままではなく、日本式、日本に合ったものを提供してくれるオリエンタルランドの力も東京ディズニーリゾートの成功には欠かせないものだと思います。


さて、そんな『ディズニーランドの経済学』。これだけではありません。
他にも色々なことが書かれています。
私が興味深かったのは「東京ディズニーリゾート最大のクライマックス」。
知っている方は知っていることですが。
このレビューでも知らなかった事があった方は是非読んでみてください。是非、是非。




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